平成14年7月29日(月)開催
財団法人 日本開発構想研究所 創立30周年記念講演とシンポジウムの記録

5.挨拶

天城 (財団法人高等教育研究所理事長、当研究所評議員)

 最後になりますが、財団法人高等教育研究所理事長、当研究所の評議員を務めていただいております天城勲様よりご挨拶をたまわりたいと思います。

 天城先生は、先ほどの新谷理事長や喜多村先生のお話にもございましたように、文部省で次官をお務めの時代から当研究所の大学の業務にいろいろアドバイスをいただき、当初から非常にお世話になっている方であります。きょうの一連の講演、シンポジウムについてのご感想なども含め、ご挨拶いただければと思います。どうぞよろしくお願い申し上げます。

 天城 いろいろな角度から貴重なご意見を伺いましたが、時間もございませんし、それについていちいちコメントしようとも思っておりません。また、その資格もございません。ただ、最近、大学問題が単に大学論としてではなく、他の分野との関連で非常に議論されてきており、江崎さんの話ではありませんが、技術革新、技術立国ということから大学の議論が盛んに出ております。その意味では、伝統的な教育学ではない分野の人から大変活発に大学論が出ております。

(財)高等教育研究所・天城理事長

 今回は大学と都市という話ですが、科学技術の発展、あるいは経済の発展と大学の研究との関連は幾つかの接点もあるし、いろいろな政策も可能になってきているようで、TLOの問題などいろいろ進んでおります。しかし、大学と都市という問題は、いわれているほどにはなかなか進まないのではないか。

 戦後、コミュニティカレッジという議論が起きたとき、日本ではとうとう短期大学もコミュニティカレッジになりきれなかった。公立のコミュニティカレッジもほとんどできなくて、いつの間にか私学がコミュニティカレッジとなったり、大都市の私鉄のビルの中で一種の生涯教育や講習会みたいなものが広がり、それが全部コミュニティカレッジになってしまった。地域との関係は大事だとか歴史的な話はいろいろありますが、日本で一番難しい問題が大都市と、さらにいえば地域社会と大学、高等教育機関との関係だろうと思っております。

 言葉はいろいろ使われておりますし、意見もたくさんありますが、具体的にどうやるのかとなると、大なり小なり似たような大学の専門的な知識を一般の人に普及するといった話になってしまい、サテライト教室の話もあちらこちらで出ていますが、中身はどこも同じではないかと思っています。

 私も当初から関係が大変深かった青森公立大学は市でやっていますが、全県の高校から推薦状を得たやり方は、生徒とのつながりを考え、地域社会との関係を考えた構想で非常にすばらしいと思っています。しかし、あのような構想は、その後ほかではほとんどありません。それには難しい問題がいろいろあるかもしれませんが、地域と大学、地域と高等教育機関を結びつけるものは何かという方法論をもう少し議論しないと、言葉もアイデアもたくさん出てきますが、大体似たようなことで、実際に効果を上げるような方法はないのではないかと思っております。

 私も、いままで地域と大学の関係という話をさんざん聞かされましたし、何をやったかもある程度覚えていますが、結局何が残ったかというとかけ声だけで、実績は何も残っていないことが多いわけです。そういう意味では、一番難しい問題に日本開発構想研究所がチャレンジし、今後やろうということで、まさに日本の新しい課題ではないかと思っております。

 きょうの最終の挨拶ですから、あまり個人的な意見は申し上げるべきではないかもしれませんが、とにかく大学が大事であると皆さんにおっしゃっていただくけれど、それをどうやって地域と結びつけるかがこれからの大きな課題ではないかと思っております。長い間、皆さんご熱心にご参加いただき、特にパネラーの方々から貴重なご意見をいただいたことを心から感謝いたしております。どうもありがとうございました(拍手)。

 司会 どうもありがとうございました。先生のお言葉を肝に銘じまして、これから研究を進めたいと思います。

 これをもちまして、財団法人日本開発構想研究所30周年記念講演・シンポジウムを終了させていただきます。ご清聴ありがとうございました。(拍手)